配信における投げ銭システムのメリットとデメリット
今回は、youtubeやTwitchが主となる話になるが、配信における投げ銭の話をしようと思う。
youtubeだとスーパーチャット、Twitchだとドネーションと呼ばれるこの機能だが、
生で配信する配信者に対して、金銭を送ることができる機能だ。
ここ最近は、配信というものもかなり一般的なものとなっているので、知っている人はかなり多いだろう。
なので、これらが何なのかということについてはそんな説明することもないと思うので、
今回はそこじゃないところの話をしようと。
さて、この投げ銭という仕組み。
これは配信者にとって何を齎すのか?そして何を奪い去るのか?
「配信者にお金が行き渡るシステムなんだから奪い去るものはないだろう」と一瞬思うが、
本当にそうなのだろうか?
メリットとデメリットについて考えてみる必要があると思った。
今回のテーマはずばり、「配信者は投げ銭を受け取るべきかどうか?」
まずは、投げ銭によるメリットを考えてみる。
1つ目、配信者にとっての収入となること。
当たり前だが、お金が行き来しているので配信者にとっては金銭的利益である。
お金・・・単純に受け取って喜ばないものはいるのだろうか?
現代社会では、個人ないし企業が配信を仕事として行っているところもあるくらいに、この投げ銭システムによる収入はバカにできない規模となっている。
トップクラスのゲームプレイヤーに、アイドル性の高いバーチャルアイドルに。
お金を色々な手段で稼ぐことができるようになるのは、基本的には喜ばしいことだろう。
稼ぎ方が増えるということは働き方が増えるということ。時代を感じずにはいられないね。
2つ目、プラットフォーム側が儲かることでサービスの維持に繋がるかも。
投げ銭をすることで、100%が本人に届くわけではもちろんない。youtubeだったりAppleだったりが手数料としていくらか持っていく。
その手数料が企業としての収入源になる。
それを使って、サービスの強化やユーザーへの還元など、できることは幅広い。
つまり、配信者-プラットフォームのwin-win関係ができあがるのだ。
金銭的な意味で損をしているのは金を投げている視聴者のみ、ということになる。
3つ目、配信者と視聴者の一体感のようなものが生まれるらしい。
やっぱり投げ銭をもらえば配信者はテンションが上がるし、感謝の言葉も口にするだろう。
投げ銭をくれた相手を特別扱いしてくれることもあるかもしれない。
それは、その配信者が好きで見てる人間からしたら、とてつもない嬉しさだと言われている。
この図式は別に珍しいものでもなんでもない。昔からアイドルなどにあったことだ。
払う側も幸せ、受け取る側も幸せ。そうここもまさにwin-win
メリットについてはとりあえずこの3つがあるだろう。
「なんとなく当たり前なこと」と思うかもしれないが、逆を言えばそれぐらいくっきりはっきりしていることだ。
これほどわかりやすい理由もないし、効果も計り知れないほどある。つよい。
本当に強いんだよ、これ。驚くほど真っ当な話。
ではデメリットがないのか?
残念ながらそうとも言い切れない。どんな物事にも表と裏はあるものだろう。
ではデメリットについて書いてみる。
1つ目、お金が絡むと色々と問題が発生する可能性がある。
金が絡むと人は変わる。これは本当のこと。
本来、趣味の世界で行われていた配信に、金銭という要素が付加されることで、とんでもない面倒事に巻き込まれる可能性がある。
例えば、その流れたお金が反社会的勢力に行き着く可能性は全くないのだろうか。
例えば、ゲーム配信をしていたとして、投げ銭を受け取ることになったとしたら、それを面白くないと思った人がゲームメーカー各社に片っ端から確認という名の通報、もっと言えば迷惑行為に及ぶこともあるかもしれない。
これについては、メーカー各社もガイドラインを発したりして、少しずつ対応は進んでいるようだ。
またはこういうこともあるだろう。今は企業がVtuberなどを雇用して配信サービスを行っているほど規模が大きいが、このまま増え続けるとどうなってしまうのか?
消費者の財布だって無尽蔵ではない。そのうち取捨選択を迫られることもあるだろう。
その時、限りのあるパイの取り合いで結構えげつない世界を見てしまうこともあるかもしれない。
ここで書いたことはあくまでも懸念なので、実際に起きているかことかどうかは、とりあえずは置いておく。
2つ目、配信者側は基本的に受け取りは拒否しないので、投げ銭する側を縛る要素が全く存在しない。
先程メリットで言ったが、お金をもらって嬉しくない人はほぼいない。なので支払われるお金はもちろん全部もらうだろう。
本当にその気になれば際限なくお金が降ってくる夢のような世界だ。凄いよね、V界隈とか本当に凄い。素直に評価に値する。
しかし、本当に大丈夫かこれ?と思うこともなくはない。
一人ひとりが投げる額が割とバカにならないレベルでエグいのを見たことがあったので、ふとそう思った。
10000円とか50000円とか乱れ飛ぶのを見て、何だこの景気の良さ・・・と若干引くことがあるんだよね。
何か祭りのようなものがあった時にそんな状況になって、配信者は
「やりすぎないでね!無理はしないでね!」って嬉しそうに言ってるわけですよ。見ようによっては滅茶苦茶怖い状況だなこれ、と思ったね。
もし、自分が課金依存者だったなら、これを自制することはできるだろうか?
投げ銭をすることによる快感は先に触れた通りだ。ギャンブルと同等には強いものかもしれないと思う。
本当に、自制は効くのか?私はそれに力強くYESと答える自信はあまりない。
だから、本来はこういう問題については企業なり配信者なりがある程度の良心を持った対応をしていくこと。
多分これからの課題になっていくのではないか、と考えたりしている。
3つ目、視聴者が配信者を縛る要素となりうること。
今回一番私が考えたのはこの部分だ。
はっきりと言いたい、投げ銭というシステムは、視聴者が配信者を縛り付ける側面がある。
それは職業として行っている配信という定義にすることにより、配信頻度や配信内容に口出しする形で表れることもある。
また、仮にだ。自分がメインで視聴している媒体がyoutubeだったとして、そこで活動している配信者に引くぐらいの額の投げ銭を行っているとしよう。
その配信者が突然引退、もしくはyoutubeでの配信を辞めた、等になった場合、どう思うのだろうか。
人によっては、「裏切られた」という倒錯的な感情を抱くのかもしれない。
別に気にしない人だってもちろんいるだろうけど、そうでない人もやっぱりいると思う。
例えば、企業所属の配信者が、自分の嫌いな企業に突然鞍替えしたとして(実際はあまりないことだろうが)、そこで配信を続けた場合、変わらず投げ銭を行うことができると自信を持って言えるだろうか?私は無理だと思う。
長ったらしく難しい例を挙げてしまったが、私がここで言いたいことは、
本来、「人の都合」で終わってしまう話が、投げ銭での蓄積があるためにごちゃごちゃと面倒くさい話になりかねない。
そういう話をしている。程度の大小はあれ。
その心理の奥底には必ず、「こっちは金を払ってるんだから」という精神が働いている。
見返りを求めない行為には金は絡まない。そのくらい金の持つ力は大きい。
もしも本当に大金を払った見返りがいらないのであれば、あなたは世界有数の石油王であるか、もしくは宗教レベルの狂信者である。別の心配をするべき。
本来、とてもポジティブなものであるはずの投げ銭システムについて考えたら、このぐらいいろんな考えがぐるぐる回ってきた。
で、今回のテーマの「配信者は投げ銭を受け取るべきかどうか?」について、これを踏まえて考えてみたい。
もしも自分がそれができる立ち位置にいたとしたら。
いや、そもそも私は配信者だから、別にやろうと思えばできる。生活が成り立つかどうかは知らん。
問題は、投げ銭を受け取りつつ、支払った側からの鎖をするりと抜ける技術なのだ。と思い至った。
もらうものはもらう。だがこちらの自由は確保する。手綱を握り続ける技術が必要だ。
そのために必要な要素を列挙してみる。
1.狂信者を囲う
2.一人あたりの支払い額を指定する
3.ある程度の良心
1は意味がない。狂信者がいれば教義はいずれ歪む。コミュニティも崩壊する。本末転倒だ。
2は現実的な手法の一つか。それこそサブスクリプション方式がそれにあたる。
だが、なんかオンラインサロンか何かか?という気持ちもある。どこか胡散臭い。
そして3。最も胡散臭いように見えるが、実はここは外せないと考えている。
基本的な金銭の授受に、別の目的を付与することはやっぱり必要ではないだろうか。
例えば、受け取った金額を使って何かのためになることをするとかだ。
受け取った額を使ってゲームを購入し、それをまた配信することで、許可を出しているメーカー、受け取った配信者、もっと配信を見たい視聴者にそれぞれメリットが生じる。
もしくは、ゲーム配信者だったらゲーム業界のためになることに使ってみるとか。アイデアは色々あると思うけども。
とにかく、全て自分の懐に入れるのではなく、収益化することの主目的をどこか別のところに置くことが必要ではないだろうか?という考え方。
それを取って良心ととりあえず言ったわけだが、一定のゴールがある目標を収益化によって達成していく。
ある意味、それがあるからこそ配信者はある程度自分の好きに活動することができる。共通の目的に対しての協力関係ということになるからだ。配信者のためではなく、共通目標のための投げ銭になる。
その上で、活動の継続に繋がる程度の利益は懐に入れる。
簡単に言ったが、とても難しいと思う。良心というフワッとした言い方をするのもそのためだ。
とにかく、緻密なバランスと計画、そして基本的には善人でなければうまくやっていけない。でないと、どこかで墓穴を掘る。
だから、結論としては、
「投げ銭を受ける形で活動をするのであれば、受け取った金銭を何に使うかの方針、目標で合意することは必須。
その上で、視聴者とは一定の距離を守り、自分が本当にやりたいことを押し通す覚悟が必要不可欠となる」
と、現時点で私は考えている。
正直めんどくさいから無収益でいいじゃん?って思ってしまう自分もいるのはそのため。
でも、金が絡むんだからきっちりビジョンを持って活動しないと、配信者も視聴者も、お互いが不幸になっちゃうかもよ。
そういう話でした。